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「遠すぎたスタートライン」

2010-03-08 | 02:37

お題「「遠すぎたスタートライン」

 格好つけたことを、何の躊躇いもなく言えなくなったのは何時からだったか。
 それは、見栄を張るということではなく、夢を語るということ。自分を表すということに他ならない。幼稚園、小学生、もしかすると中学生の頃、一度は誰もが持ったであろう。ただ、それは夢であって、思っているだけであって、実行できるかどうかはまだ分かっていないのだ。
 大学を卒業後、会社に勤めたはいいものの、そこはブラック企業と呼ばれるような場所だった。私は数ヶ月もたたずに体調不良を起こし、病院へ入院。辞表を受け付けなかった企業ではあったが、此方側が警察という言葉を使うと、あっさりと手を引いていった。
 それからというもの、世間一般的に言われる、ニート、と呼ばれる存在となった。
 仕事を失った私は稼ぎもなく、親に寄生するほかなかったのだ。家族からはしょうがないといわれ、親族からはろくでなしといわれ、近所からは負け犬と呼ばれた。
 両親は私のことを気遣ってか、今はゆっくり静養するといい、と言ってくれている。しかし、この状況を何時までも甘んじて受け入れる訳にはいかない。いや、そうしていたくないのだ。
 私の家庭は一人息子、つまり、私しかいなかった。姉や兄、弟に妹、そんな存在はいなかった。故になのか、両親は私をよく可愛がってくれた。母と一緒に料理を作り、父と一緒に野球観戦をした。今では三人で酒も飲めるようになった。
 ようやく親孝行が出来ると思っていた。感謝を、せめて私に出来る限りの感謝を、両親にしてあげたかった。
 しかし、逆に孝行してもらったのは私だった。
 両親が働きに出かけている間に、私は家事をしていた。母親はやらなくてもいい、と言うが、せめてこれくらいでもしないと、息が詰まってしまう。
 掃除をしている時、一冊の本を見つけた。それは薄緑の表紙で、なにやらよく分からない絵が描いてあった。背表紙には「中学校記念文集」と書かれていた。
 何気なくそれをぺらぺらと捲ると、自分の名前を見つけた。目次にではなく、文章でもなく、噴出しがたくさんあるページの一つにあった。噴出しの中には、
「将来はパパとママに新しいお家を買ってあげて、一緒に暮らしたいです」
 と、書かれていた。
 中学生の頃から、私は両親にこんな思いを抱いていたらしい。これが自分の息子であれば、褒めてやりたいくらいだ。
 しかし、現実は違う。こんな清らかな思いを持っていても、何時かは駄目になってしまう人間もいる。私のことだ。
 それでも、まだ思えるのだ。両親に、何かをしてあげたいと。思いたいのだ。両親が、喜ぶことが出来ると。
 諦めたくはなかったのだ。自分がここにいれることを、本当に感謝できるのは、この両親のおかげなのだから。
 だから、私には見えていて、分かる。
 遠すぎたスタートラインに、少しずつ近づけていることに。
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Theme : お題
Genre : 小説・文学

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