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お題「忘れられたフレーズを」

2010-03-09 | 21:58

お題「忘れられたフレーズを」
 時は、思ったよりも早く、予想したよりも遅く、それでいて私達の心の潤いを乾かしていく。乾燥し始めた心は、大事なことを守ろうとする。それは一種の本能である。
 その一番大事なことを守っていると、その次に大事なところが、時の風に吹かれる。乾燥してひび割れていたその部分は、風に誘われるまま、ぽろぽろと零れ、運ばれていくのだ。
 それは過去の思い出である。喜怒哀楽の全てがそこに詰まっているといっても過言ではない。しかし、人は今を生きるので精一杯である。前を見るためには、顔を凛と張っている必要がある。後頭部に目のついた人間はいない。拾い集めたければ振り替えるしかないのだ。
 だが、人は振り返らない。思い返そうとするだけだ。風で運ばれなかった部分のことを、微かに思い出し、満足する。それで十分だ。余計な思いをぶり返してしまっては、感傷に浸ってしまうからだ。
 だから私たちは、過去に母から聞いた子守歌のフレーズを、思い出せないのである。
 そのために、私がいる。
 歌い人、と呼ばれる、私がいる。
 子供が大人になって、親から子守唄代わりに聞かせられたフレーズを、私は伝えて回る。
 それが本当の子守唄であったり、自作の歌であったり、童謡であったり、何でもいいのだ。子供ながらに思う子守唄とは、親の声そのものなのだ。
 だから私は伝えて回る。そんな大人たちに、親たちが息子や娘のために歌ってくれたあのフレーズを。
 そして、少しでも両親のことを、家族のことを、思い出して、感謝できるように。
 私が大人になった時、歌い人が、フレーズを教えてくれたように。
 だから、今からフレーズを届けに行こう。何かを忘れてしまった人の元へ。
 この高い高い空の上から、渡しに行こう。
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Theme : お題
Genre : 小説・文学

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