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お題「ジンクスの理由」

2010-05-08 | 22:31

お題「ジンクスの理由」
 私は一応小説家だったりする。
 多分、間違って夢でも見ていなければ。
 朝、目覚まし時計の音を出す携帯電話に触れてその音を瞬時にミュートに切り替えた。二度寝 と呼ばれる者を働いていないはずの脳は瞬時に選択したのだ。
「朝ですよ、起きてください」
 しかし、そんなことが許されてはいなかった。
 私は別に定時に仕事をしなければいけない訳ではない。必要な時に机に向かい、何十式も前の懐かしいデスクトップパソコンでワードを開く。薄く光る液晶モニターに出現する文字を変換しながら、物語を紡いでいく。それは、朝でも夜でも、勿論のこと昼でも、何時でも出来る仕事だった。つまり、二度寝をする権限は一応持っているつもりである。
 されど、それが許されないのは、彼女がしっかり者であるからに違いない。
「あー、マリー、もう少し寝かせてくれないかな」
「駄目です。朝御飯が伸びます」
「今日は朝からウドンかい?」
「いいえ。トーストです」
「……それは伸びるものなのかな」
 やれやれ、と思いながら体を起こす。マリーが部屋のカーテンを開け、少し黄色がかった光が部屋に差し込む。そこで初めて、マリーの姿を確認出来た。
 金髪の長く、しなやかな髪に、金色の瞳。それにまったく似合わない和風の白の割烹着。この格好で朝食は洋風というのだから、整合性も何もないものだ。情緒がないとも言う。
 明るくなった部屋で大きく伸びをしてから、マリーの後ろについて部屋を出る。居間は部屋と直結しており、白を基調とした大きめの室内となっている。その部屋の中に、炬燵がある。凄く不自然に。
 最初はどうかと思ったものの、やはり日本人として炬燵は素晴らしく、一度試しに使ったら抜け出せなくなってしまったのだ。
 その炬燵の上に朝食が置かれていた。トーストが二枚。小鉢でひじきの煮物。ホット烏龍茶。和洋中全揃いではあるが、あまりいい組み合わせではない。
 とはいえ、当の本人が毎日作るようになると、こんな形にまで果てていく気がする。文句を言わずに炬燵に足を入れて、烏龍茶に口をつける。
「本日の仕事は?」
「気分が乗ったら、かなぁ。あぁ、でも、変な仕事頼まれちゃったんだよなぁ」
「変な仕事?」
「そうそう。近未来SFモノだってさ」
「それってどういうモノなんですか?」
「さぁ。ちょっと皆目検討つかなくてね」
 実は検討はついている。ただ、変な仕事であることは間違っていないのだ。
 この世界に、私のいる小説業界の人々の間で言われる、悪い言い伝え。
「どんな有名な作家が書いたとしても、SFモノにはならないし、誰も新鮮味を覚えない」
 つまりはジンクスということだ。それを破ってみせろ、とのことらしい。
 一応鳴いて飛んだことがあるからこそ、白羽の矢がたったのだろうが、それでも変な仕事であることに変わりはない。難易度が高く、挑戦する価値があるかも不明である。
「しかし、近未来、ねぇ」
 私はマリーを見ながら呟く。
「? どうかしました?」
 私は人形を見ながら呟く。
「近未来、想像つかないもんなぁ」
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