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お題「あるはずもない攻略法」

2010-09-09 | 00:56

お題「あるはずもない攻略法」


 現状の私はこのゲームをプレイし始めて三十年。非常に長くプレイしてきたが、ここに来て行き詰ってしまった。
 プレイし始めた当初は右も左もわからなかった。しばらくして周りが見え始め、自分と周りの距離を感じるようになった。アップデートが自動的に行われ周囲のキャラクターのコミュニケーションが取れるようになってきた。
 レベルアップを続け、必要な装備を用意して頼れる仲間でパーティを組んだ。今ではこの頃が一番プレイし甲斐のある時期だった気がする。努力をしただけ能力値は上がったし、装備品もどんどん新しく強く物になった。
 やがてレベルアップも遅れがちになったため、ジョブチェンジすることになった。それまでにも何度かジョブチェンジは行ってきた。しかし、その時までは選択肢が非常に少なかったのだ。多くても四つくらいで、大抵は二つくらいしかなかった。
 だが、今から行うジョブチェンジはどうだろう。選択肢が多すぎて、選ぶに選べない状況だ。一度ジョブチェンジを行えば、しばらくはその方向性で自分を育てていくしかない。能力値が一度に上昇する値は増えるだろうが、偏ったあがり方をするはずだ。もしその上昇の仕方が気に入らない場合は、一度ジョブを持たない状態とならなくてはいけない。場合によっては、能力値の上げ幅を無駄にすることにもつながりかねない。
 だからこそ悩んでいる。このゲームは常にオンラインで稼動している。一人につき作れるIDは一つまで。パスワードも一度設定すると、再設定するのに相当の時間がかかってしまう。
 悩みに悩み、どうすればいいのかを模索した。攻略法がないかと手当たり次第に検索した。その検索した内容は、ガセとも捉えることが出来、比較的正確な情報として捉えることも出来た。迷っている最中にそんなあやふやな情報に手が出せるはずもない。
 ため息が思わず漏れた。発言がウィンドウを通して誰かに伝わったのだろう。内緒発言、つまり私にだけ聞こえる発言が送信されてきた。
「そんなに悩んで、どうしたの?」
「ちょっとね……新しいジョブを何にするかで」
「あなたの好きなジョブでいいじゃない。確かあったでしょ? 私にいつも話していたじゃない」
「それはそうなんだけど不安でね……」
「みんなそんなものよ。不安なのはあなただけじゃないわ。きっとうまくいく」
「それもそうだね……ありがとう、少し勇気が沸いたよ」
 モンスターを倒して得ていたお金をぎゅっと握り締めた。内緒発言の声が強く結んだ手がほころばないように包んでくれている気がした。そのお金は私の装備品を買うお金を貯めたもので、有に三ヶ月くらいは袋に金貨を入れ続けていた。そのお金で迷うことなく二つの装備品を買った。それは頑丈な鎧ではなく、強固な剣でもない。ただ美しいだけの指輪のアクセサリーだった。その指輪を一つ装備して、とある人に内緒の発言をする。
「やぁ、ちょっといいかい」
「あら? どうしたの?」
「ジョブチェンジ、することにしたよ」
「……そう」
「だからこの指輪の片方を、君に」
「……そう」
「受け取って貰えないかな」
「……はい」
 ジョブチェンジは無事に成功した。
 余談で、彼女の発言がシンプルだったのは、嬉し泣きでウィンドウが見えなかったからだそうだ。
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Theme : お題
Genre : 小説・文学

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